組織について

役割


 かつて世界の海は,沿岸から3海里(5.6km)までの領海の外では自由に魚を獲ることができました。我が国の遠洋漁業は,太平洋,大西洋,インド洋,南極海で,まぐろ,くじら,すけとうだら,たい,いか等を1973年に400万トンも漁獲したことがあります。

 しかし,今では沿岸から200海里(370km)の水域は沿岸国が管理することとなり,遠洋漁業はこの外側の公海で操業するまぐろはえなわ漁業などが中心となっています。こうした公海においても世界の国々が海域や魚種別に条約を結んで,国際的な管理がおこなわれています。漁業資源を枯渇させないように保護し,安定した漁業が続けられるようにすることが管理の目的です。

 これらの条約の下で,毎年科学委員会をおこない,加盟国の科学者が集まって種類ごとに資源の状態が健全であるかどうかを評価し,1年間に獲ってもよい数量や漁期・漁具の制限等の資源管理方策を本会議に勧告します。本会議ではこの科学的勧告を検討し,国別の漁獲量の割り当て等を決めます。国際水産資源研究所の科学者は,我が国の漁業データや調査船による調査の結果を分析した論文を作成して科学委員会に出席し,科学的で合理的な結論が形成されるように意見を述べ,会議をリードしています。
          
 国際水産資源研究所では国際的資源の持続的利用を実現するために調査と研究を行い,関連する多くの国際条約にもとづく科学委員会に出席して研究の成果を活用しています。この役割は我が国水産業のためだけでなく,広く消費者の期待にこたえ利益を守ることにも直結しています。さらに,科学的な根拠に基づいて海洋から食料を得るという、21世紀の人類の生存にとって鍵となる考え方を国際的に確立する上でも重要な役割を果たしています。