中村遺稿

 マグロ漁業資源の生物学:1970年度版(中村遺稿)について

             中村原稿(遺稿)の背景とそのプロフィール

 本未定稿の論文は国際水研OBである須田明氏より後進の参考になるかもしれないと、公開を依頼されたものである。しかし、論文執筆年代が昭和40-50年代とあまりにも古く、未定稿であることから、国際水研HP上で未定稿のまま公開を行うこととした。マグロ研究の先人のアイデアを理解する助けになれば幸いである。

 著者中村広司は、昭和24年(1949年)、南海区水産研究所(在高知)の発足以来、マグロ資源の組織的研究をリードし、昭和39年に退職した。その後数年間のマグロ漁業の動向や研究の進展を踏まえて、前回の平年漁況図からほぼ10年を経た昭和40~45年の段階での知見の総集成を目指して後輩の須田とともに「マグロ資源と漁業」の執筆に取り組み始めた。この書の印刷、刊行は恒星社恒星閣が引き受けることで話が進んでいた。

 しかし、間もなく、須田の執筆環境が急速に困難なものとなる。 昭和46年に中村が病に斃れる。加えて、その頃から漁業の国際環境が急速に変化し、その後のマグロ漁業は昭和40~45年段階のものとは大きく変質してしまう。こうして、その当時の漁業や資源の状態を記述しても、その内容は現段階では殆ど意味のないものとなってしまった。かくて、中村の努力にもかかわらず、本書の刊行は実現に至らず、中村が執筆した原稿は須田が保管したまま今日に至った。

 中村はカジキ類研究の先駆者であった。その蘊蓄には耳を傾ける値打ちがある。シロカワ、クロカワが、マカジキ類とは形態的にも、生態的にも著しく異なっていること、その結果、漁場の追跡や資源管理の手法が他のカジキ類やマグロ類とは異なることを教えてくれた。以上のような視点で中村の遺稿を見ると、考えさせられるところ、教えられるところが多いと思われる。

 すこしでも早く公開するために初めの2章分だけとりいそぎ掲載した。残りの部分についても原稿のチェックが終わり次第、順次掲載する予定である。

 

 別添資料(1):

    中村遺稿(仮称:マグロ漁業資源の生物学:1970年版)の組み立て

 

                           範囲(項)(章別原稿用紙枚数)

緒言                             1-8  (  8)

Ⅰ 分類                                 (152)

 Ⅰ-A マグロ類                     1-67

  Ⅰ-A-1 科および属の問題 

  Ⅰ-A-2 マグロ属の標徴

  Ⅰ-A-3 種の記載

  Ⅰ-B カツオ                     68-73

  Ⅰ-C カジキ類                    74-152

Ⅱ 分布と回遊                             (840)

 Ⅱ-1 総論

  Ⅱ-1-1 マグロ類の生息海域の性状          1-12

  Ⅱ-1-2 分布と回遊にみられる法則性         13-42

 Ⅱ-2 生活領域  

  Ⅱ-2-1 種による生活領域の分離           43-51

   各論

   Ⅱ-2-1A クロマグロ               51-61

        B ミナミマグロ              62-64

        C ビンナガ                64-67

        D メバチ                 67-70

        E キハダ                 70-74

        F コシナガ                74

        G タイセイヨウマグロ           74-75

        H カツオ                 75

        I カジキ類                75-76

   Ⅱ-2-1(追記)垂直分布              77-90

  Ⅱ-2-2 生態(成長)の過程による生活領域の分離   91-92

   各論

   Ⅱ-2-2A クロマグロ               92-126

        B ミナミマグロ              127-152

        C ビンナガ                153-237           

        D メバチ                 238-377

        E キハダ                 378-502

        F カツオ                 503-604

        G カジキ類                605-774

 Ⅱ-3 回遊

  Ⅱ-3-1 総論                    775-782

  Ⅱ-3-2 同一生態下の回遊              782-790

   Ⅱ-3-2A 北太平洋のビンナガ           790-797

        B 豪州東方沖合のキハダ          797-799   

  Ⅱ-3-3 生態の転換に伴う回遊            799-804

   Ⅱ-3-3A 北太平洋のクロマグロ          804-805 

        B ミナミマグロ              805-806

        C 北太平洋のビンナガ           806-810

        D 太平洋のメバチ             810-812

        E 太平洋のキハダ             812-815

        F 他のマグロ類とカツオ          815

        G カジキ類                816

 Ⅱ-4 仮説の吟味                    816-817

  Ⅱ-4-1 1OS付近の太平洋にみられる海洋の不連続構造   817-819

  Ⅱ-4-2 南大西洋の漁場構造             819-822

  Ⅱ-4-3 放射能汚染魚の分布             822-823

  Ⅱ-4-4 総合的な考察                820-840

Ⅲ 繁殖と成長及び食性

 Ⅲ-1 総論                             (388)

  Ⅲ-1-1 産卵習性                  1-8

  Ⅲ-1-2 卵の形状                  8-9

  Ⅲ-1-3 仔漁と稚魚                 9-18

  Ⅲ-1-4 少年前期                  18-22

  Ⅲ-1-5 最小成体                  22

  Ⅲ-1-6 年齢と成長                 22-25

  Ⅲ-1-7 食性                    25-33

 Ⅲ-2 各論 (A~D)(E~I)

  Ⅲ-2-A クロマグロ                 34-66

      A-1 北太平洋のクロマグロ

      A-2 大西洋のクロマグロ

      B ミナミマグロ                67-66

      C ビンナガ                  97-147

      D メバチ                   148-194

      E キハダ                   195-263

      F コシナガ                  264-267

      G タイセイヨウマグロ             267-272

      H カツオ                   273-317

      I カジキ類                  318-388

引用文献                          1-35   ( 35)