研究所機関評価会議概要報告
遠洋水産研究所
平成16年度の業務の実績についての遠洋水産研究所機関評価会議(研究所機関評価会議)は、平成17年3月9日に開催されましたので、以下にその概要を報告します。
また、水研センターの機関評価会議(センター機関評価会議)の結果概要については、水産総合研究センター(http://www.fra.affrc.go.jp)のホームページを参照してください。
1 開催日時 平成17年3月9日(水)10:30-17:00
2 開催場所 遠洋水産研究所会議室
3 出 席 者
○外部評価委員
田中栄次 東京海洋大学資源管理学科助教授
幡谷雅之 静岡県水産試験場漁業開発部長
三宅 眞 日本鰹鮪漁業協同組合連合会顧問ドクター
安本教傳 椙山女学園大学生活科学部教授
○遠洋水産研究所
石塚吉生 所長
魚住雄二 企画連絡室長
白鳥高志 総務課長
鈴木治郎 浮魚資源部長
馬場徳寿 近海かつお・まぐろ資源部長
川原重幸 外洋資源部長
稲掛伝三 海洋研究グループ長
張 成年 企画連絡科長:事務局
小倉未基 かつお研究室長:事務局
4 議事次第
(1)研究をめぐる情勢(所長)
(2)所運営の現状(企連室長、総務課長)
(3)中期目標期間の暫定評価に関する説明(企連室長)
(4)調査研究(経常研究、事業)の進捗状況、成果、計画(3研究部、1研究グループ)
(5)研究課題の評価の総括
(6)事業実施状況の総括
(7)意見交換と評価
(8)今後の予定等(企連室長)
5 概要
議題 |
結果の概要 |
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所長の挨拶、出席者紹介の後、安本委員を座長に選出し、議事を行った。 |
1.研究をめぐる情勢 |
所長より、農林水産行政・施策の見直しが簡単に説明された。また、遠洋水産研究所が関係する主要な国際漁業管理条約や委員会の動向についての解説を行った後、遠洋水研組織改正と一部組織移転についての説明がなされた。これに関して、機能や連携の維持について質問があり、所長、企画連絡室長から、機能低下や連携体制の不具合はできるだけ生じないよう努力するとの説明がなされた。 |
2.所運営の現状 |
企画連絡室長より、遠洋水研人員構成、予算、研究課題、業績、調査船調査、受託事業等の資料を元に所運営の現状が説明され、委員からは大学への講師派遣実績、研修生やポスドク受入れ体制、成果報告に関する質問が出された。これに関して、高知大学及び東京海洋大学と連携大学院協定を結び教授、助教授を派遣していること、研修生7名、ポスドク2名を受け入れていること、査読論文以外にも国際会議提出論文、文書が多くあることが説明された。 |
3.中期目標期間の暫定評価に関する説明 |
不具合が指摘されてきた機関評価会議における評価方法について、今年度は中期目標期間の暫定評価を行うこととなり、計画達成、科学技術価値、波及効果という3つの評価軸を基礎とした評価方法について企画連絡室長から説明があった。 |
4.調査研究の進捗状況、成果、計画 |
3研究部および1研究グループから、平成16年度調査研究の概要と成果、平成17年度計画について報告がなされた。調査研究のPR不足及び波及効果が大きい技術や成果についてはもっと広報に心がけるような指摘が委員から多く出された。 |
5.研究課題の評価の総括 |
2月中に開催された各研究評価部会において実施した17の研究小課題(年度計画第2の1の小課題)の評価は、S:1課題、A:16課題、B:0課題、C:0課題であり(別添1)、全ての小課題が16年度の当初計画を達成したと評価された。これら小課題を積み上げた3つの中課題の単年度評価はAとなることが企画連絡室長より説明され、評価委員の了承を得た。企画連絡室長から13年度から今年度までの業務実績が説明され、中期目標期間の暫定評価に関して、3つの中期計画の自己評価をAとしたことが発表された。これに対し、波及効果が大きく、目標と計画を超えている成果、技術に関してはS評価とし、そのように評価結果を書き改めるべきとの意見が委員の多くから出された。これらの意見を取り入れ、中課題「広域性水産資源の生物特性の把握」の中期目標期間の暫定評価軸のうち科学的技術価値がSであったがこれに加え波及効果もSにすることとし、総合評価をSとした。中課題「広域性水産資源の持続的利用技術の開発」の中期目標期間の暫定評価軸は全てAであったが、波及効果をSとし総合評価をAとした。 |
6.事業実施状況の総括 |
特になし |
6 15年度指摘事項等のフォローアップ状況
外部評価委員の主な意見 |
対応方針と実施状況 |
・水研センターの評価システムの中での研究所機関評価会議の位置づけをより明確にする必要がある。 |
・研究所に係わる事項について具体的なご意見をいただけるよう資料の内容や説明方法を改善する。
・業務の効率化に関する事項について、研究所レベルでの具体的目標の設定について本部に対し検討を要請した。 |
・人員増が見込めないなかでは、従来の魚種別対応を見直し、研究手法を軸にした組織再編を考えてはどうか。 |
・当面の国際・国内業務への対応において魚種別対応の枠組みをはずすことは出来ないが、研究手法を軸にした研究部間の連携強化を推進する。外洋資源部と浮魚資源部が共同で鯨類と鮫類への電子標識を用いた行動追跡研究を行っている。 |
・水研センターとして海洋環境研究についての長期ビジョンが必要ではないか。
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・平成17年4月に海洋研究グループが横浜中央水産研究所庁舎に移動することが決定している。これにより、中央水研海洋研究部門との連携が強化されるとともに、現在、4水研(中央、東北、遠洋、北海道)が共同で行っている交付金プロジェクト研究「海況予測モデルの開発」の進展が期待される。 |
・海洋・南大洋部の改組は効果的か。 |
・海洋・南大洋部を廃止し、2研究室を統合、新たに海洋研究グループを設置した。機能は低下することなく研究課題は全て継続されているとともに、成果発表も順調である。 |
・国民へのタンパク供給など、農林水産研究のなかでの水産研究の独自性、重要性を示すべきである。 |
・我々が行ってきた調査研究及びその成果についての広報を強化しているところである。 |
・混獲生物の調査・研究に関し、オサガメとタイマイについても取り組んで欲しい。 |
・オサガメについては、衛星利用による行動追跡に成功した。包括的な生態調査研究を行うことが必要であるため、海洋だけでなく陸上すなわち産卵場の調査研究にもとりかかっている。タイマイについては、栽培漁業部における人工繁殖技術の開発に協力している。 |
7 16年度指摘事項と対応方針等
外部評価委員の主な意見 |
対応方針と実施状況 |
今後検討するもの |
・都道府県でもポスドク制度を開始しているところもあると聞いているが、将来優秀な人材の確保で競合が起きる可能性もある。そのため、雇用条件等の待遇面で改善することもあるであろう。 |
・現在、学術振興会のポスドクを2名(うち外人1名)受け入れている。 |
・競争的資金のさらなる確保。
・魅力的な研究の推進。 |
・国際資源調査等の事業対応に多くの時間をとられているようであるが、予算に見合う数の論文成果はあげられているか。 |
・16年度の査読論文数は34編であり、研究者1名あたり0.81編となった。また、国際会議対応が非常に多く、その会議に提出する論文や報告が55編あるため、活発な成果報告がなされているものと考える。 |
・未利用データの発掘と論文化の推進。 |
・鳥ポールや青染餌等混獲回避技術の開発、研究と成果は目標と計画をすでにはるかに超えているためS評価とすべきでありかつ波及効果が非常に大きいと考えられるがPR不足である。 |
・特に環境保護団体からのサメ、鳥、海亀を混獲する延縄漁業への批判に対しては受身であったが、近年では調査研究の成果を軸に攻勢に転じている。DVDも作製して宣伝しているところである。 |
・ホームページ等も利用したさらなる広報の展開。
・仲間内でのDVD作製にとどまっており、外部団体や外人も取り込んだ宣伝メディアを検討。 |
・海洋グループの研究で海洋環境変動とまぐろ類の加入量変動の関係が示されたが、全てが海洋環境と関連しているわけではない。漁業形態の変遷も取り込んだ評価をする必要があろう。 |
・海洋研究グループでは物理海洋環境と加入量変動との関係に主眼を置いてきた。まぐろ研究部が指摘分野への対応を行っていると考える。 |
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・波及効果が大である成果についてはS評価をつけるべきであるが、他人が読んだ場合でもS評価となった理由が理解できるような書きぶりにすべきである。 |
・中期目標期間の暫定評価について自己評価をAとしたもののうち、評価委員の先生からSにすべき、との意見をいただいた項目について書きぶりを改める。 |
・調査結果や成果の報告についてはさらに積極的な広報を行うよう検討。 |
・非公務員型の独法となることが決定しているが、行政との関係に問題はないのか。 |
・我々独法組織の存立は行政側との円滑な関係維持にかかっている。独法化前からお互いをよく知っている世代が双方にいるため多くの面で円滑な関係が維持されているが、世代交代してゆくと距離が遠くなっていくことも懸念される。 |
・今まで通りの円滑な関係を保ちつつ、水研センターとしての独自性を持ちながら研究を進展。 |
・地方からの要望には沿岸に関係するものが多くまた即時性を要求されるものがほとんどである。このような要望は遠洋水産研究所としては受入れにくいのではないか。 |
・中期計画では、公立機関等が実施する研究等への協力、他機関との連携の推進、専門分野を活かした社会貢献、研修生受入れ等が謳われており、様々な事項に対応できるような柔軟な受け皿となっている。実際にイルカの食害については県から調査研究の要望があり対応したことがある。我々に対応できる知識や技術があるかぎり要望を受け入れられる体制になっている。 |
・ニーズのある調査研究体制を維持。 |
・一般向けの情報発信が必要。インターネットを活用しもっと広報強化をするべき。 |
・ホームページで調査研究を紹介し、遠洋ニュースを年2回発行している。 |
・調査結果や成果の報告については広報の強化を行うとともに広報の仕方についても検討。 |
別添1
平成16年度研究評価部会開催状況
研究評価部会名 |
外部委員 |
研究小課題数
(評価結果) |
開催日 |
海洋研究グループ評価部会 |
久保田雅久(東海大学海洋学部教授) |
3(S: 1,A: 2) |
平成17年2月10日 |
浮魚、近海かつお・まぐろ資源部合同評価部会 |
田中 彰(東海大学海洋学部教授) |
7(A: 7) |
平成17年2月17日 |
外洋資源部評価部会 |
桜本和美(東京海洋大学教授)
中村 隆(統計数理研究所教授) |
7(A: 7) |
平成17年2月24日 |
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