研究成果情報(遠洋漁業関係)

表中層トロール網によるかつお・まぐろ類大型稚魚の採集

[要約]
表中層トロール網により、これまで採集が困難であったかつお・まぐろ類大型稚魚を多数採集した。これらには、クロマグロ、キハダ、カツオが含まれており、初期生態の更なる解明が期待される。
遠洋水産研究所・浮魚資源部・温帯性まぐろ研究室、熱帯性まぐろ研究室、かつお・まぐろ調査研究室
[連絡先] 0543-36-6000
[部会名]平成9年度遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専 門] 資源生態
[対 象] まぐろ、かつお
[分 類] 調査
[背景・ねらい]
尾叉長1cm以上のかつお・まぐろ類大型稚魚は、稚魚ネット等の通常の採集器具では採集が困難であり、初期生活史に関する知見は1cm以下の仔魚期に限られていた。1992年に東北区水産研究所がミクロネシア海域において中層トロールによりカツオおよびキハダ稚幼魚の大量採集に成功し、中層トロール網によるまぐろ類稚魚の採集の可能性が示された。そこで、クロマグロを主対象とし、かつお・まぐろ類大型稚魚を採集するため、表中層トロール網による採集調査を実施した。

[成果の内容・特徴]
1 1997年6月11~14日、調査船俊鷹丸(遠洋水産研究所所属 397トン。下島甫船長以下25名)により、沖縄本島北西沖からトカラ海峡までの黒潮流域において表中層トロール網(網口幅30m、網口高さ30m、網長さ約86m)による7回の稚魚採集を実施し、かつお・まぐろ類と思われる稚魚を大量に採集した。図参照
2 筋肉のミトコンドリアDNAによる種判別を行った結果、クロマグロ164個体写真参照(尾叉長20~47mm、平均36mm)、キハダ6個体(尾叉長26~63mm、平均44mm)が含まれていることが判明した。また、カツオ型稚魚を約10,000個体(尾叉長18~69mm、平均36mm)採集し、現在分析中であるが、これらの一部についてカツオおよびマルソウダであることを確認した。その他、スマ、ハガツオ、ヒラソウダといったサバ科魚類稚魚も得られた。
3 本調査の成果をまとめると以下の通りである。
3-1)これまで採集できなかった尾叉長2cm以上のクロマグロ大型稚魚を大量に得た。
3-2)クロマグロのみならず、これまで日本近海では得られていないキハダ、カツオの大型稚魚を得た。
3-3) 表中層トロール網がクロマグロ稚魚の採集に有効であることが明確になった。

[成果の活用面・留意点]
1 今回の調査は予備調査であり、非常に限定された海域、時期での調査である。今後、時間的、空間的に、より広範囲な調査を実施することにより、クロマグロ稚魚期の分布、食性、成長、本州沿岸への来遊機構といった初期生態の解明が大きく進むと期待される。さらに、海洋環境データともあわせて、稚魚の水平・鉛直分布を規定する要因の解明や日本沿岸への来遊機構の解明も期待される
2 これらの知見は、栽培漁業においても、健全な種苗の生産および効果的な放流のための基礎知見として重要である。


[その他]
研究課題名:クロマグロ加入量変動機構の解明
予算区分 :漁業調査
研究期間 :平成4年-9年
研究担当者名:辻祥子、伊藤智幸、張成年、西川康夫
発表論文等:
・平成9年度 日本水産学会 秋季大会にて発表
・平成10年度 日本水産学会 春季大会にて3題を発表予定

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