研究成果情報(遠洋漁業関係)

アジア系さけ・ます類の回遊経路の解明とその資源量推定方法の開発

[要約]
日本系を含むアジア起源のさけます類幼魚が、降海後、夏から秋にかけてオホーツク海に回遊することを明らかにした。オホーツク海では、さけ・ます幼魚は比較的限られた範囲に分布するので、トロール調査等でその分布量を推定することが可能であった。
遠洋水産研究所 [連絡先]0543-36-6035
[部会名]遠洋漁業
[専門]資源生物
[対象]さけ
[分類]研究

[背景・ねらい]
日本系のシロザケ幼魚は、海に下った後、北日本の沿岸域を北上し、夏には沿岸を離れて北太平洋沖合を東に回遊し、太平洋中央部に達するものと考えられて来た。しかしながら、過去の分布調査では、夏には北太平洋沖合域では、さけます類幼魚はほとんど採集されておらず、シロザケの幼魚が夏をどこで過ごしているのかは、さけます類のの生活史を解明する上で大きな謎となっていた。

[成果の内容・特徴]
1 1993―1996年の夏・秋に表層トロール・流し網を用いて、北海道・千島列島の太平洋側及びオホーツク海全域で142回の試験操業を行なって、さけます類幼魚の分布がオホーツク海に限定されており、太平洋側ではほとんど見られないことを確認した。このことから日本系だけでなくロシア系も含めてほとんどのアジア系さけます類幼魚がオホーツク海で過ごしているものと推定された。
2 シロザケ幼魚については、鱗の特徴やアイソザイム対立遺伝子頻度の分析などから、オホーツク海で採集されたものの中には日本起源のものがかなり含まれていることが明らかになった。
3 サクマラス幼魚についても、リボン型標識、鰭切り標識等の発見から、日本起源のものが含まれていることが明らかになった。
4 さけます類幼魚は、夏の高水温期には、オホーツク海の中部から北部にかけての低水温の海域に分布し、秋の表面水温低下にともなってオホーツク海南部に南下、初冬には太平洋あるいは日本海に移動するものと推測された。
5 さけます類幼魚は夏秋季には、オホーツク海の比較的限定された海域に集中的に分布することから、トロールや魚探による掃海調査により、その分布量を推測することが出来ることが明らかになった。(具体的デ-タ)

[成果の活用面・留意点]
1 さけます類幼魚の分布量推定とアイソザイム対立遺伝子頻度分析等による系群識別を組み合わせて行なうことにより、その年、海に降ったアジアの各系群のさけます類幼魚の資源量を推測することが出来る。これを基にして、親魚の回帰量の予測や日露間の適正な漁獲割り当て量の算出の精度を飛躍的に向上させることが出来る。
2 今後は、調査を行なうことが出来なかったロシアの領海内の情報収集を充実させる必要がある。


[その他]
研究課題名:日本系シロザケの生活史およびその中での種間関係の把握
予算区分 :漁業調査取締ま費さけ・ます資源調査
研究期間 :平成5~10年
発表論文等: 平成8年度日本水産学会春季大会、1997シロザケ・カラフトマス研究集会 (カナダ)発表論文集、平成5年度開洋丸さけます幼魚調査報告、その他

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