研究成果情報(遠洋漁業関係)

調査漁獲によるミナミマグロ分布仮説の検証 (漁業のない海域に魚はいないのか?)

[要約]
ミナミマグロの資源評価においては、1989年の漁獲量規制導入後、操業が行われなくなっ た時期・海域における資源密度が重大な争点となっている。休漁期に実験的な漁獲を行い、 問題となる時期・海域にも商業操業域と同じ程度の魚が分布しているという日本の主張を 実証した。
遠洋水産研究所・浮魚資源部・温帯性まぐろ研究室、数理解析研究室
[連絡先] 0543-36-6042
[部会名] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専 門] 資源評価
[対 象] まぐろ
[分 類] 行政
[背景・ねらい]
ミナミマグロの資源の現状と将来の動向については、管理に当っているCCSBT(ミナミマ グロ保存委員会)の中で大きく意見が分れている。その主要原因の一つが、1989年の漁獲量 規制導入後操業が行われなくなった時期・海域における資源密度についての意見の違いで ある。オーストラリア・ニュージーランドがこれらの時期・海域には魚がいないという仮説 を重要視しているのに対し、日本は規制の影響で操業が行われなくなったのであり、問題 となる時期・海域にも一定量の魚は分布すると主張している。そこで休漁期に実験的に漁獲 を行い、問題解決のための実証データを収集した。

[成果の内容・特徴]
・調査船を2群に分け、一方のグループは調査海域全体の魚の分布を調べ、他方のグル ープは自由に操業し、調査時期における仮想的な商業船の分布を再現した。調査対象海域 におけるミナミマグロの分布域とともに、両者の操業域を(図1)に示す。
・休漁期の調査にも関わらず、商業漁期とほぼ同様のCPUE(資源密度の指標)が得ら れた。ただし小型魚の漁獲が多い。
・仮想的な商業船操業域とそれ以外の海域とのCPUEの比の平均推定値は、7月が 0.56-0.95、8月が0.39-0.80となった(図2)。下限値は調査データが得られなかった海域の 魚の密度を0とした場合の推定値、上限値は調査データだけを用いた推定値である。
・上記で得られたCPUEの比の下限推定値を使って、資源量指数を再計算し、資源評価・ 将来予測を行なうと、3国間の見解の相違も小さくなり、管理目標である2020年の親魚資 源量を1980年水準に回復する確率もCCSBTで従来得られている値よりも高くなる(図3)

[成果の活用面・留意点]
1995年以降、CCSBTの下で3国共同で本調査を行なうために努力を続けてきたが、 オーストラリア・ニュージーランドの理解が得られず、日本独自の調査として実施に踏切っ た。得られたデータは日本の主張を裏付ける結果となったが、CCSBTでの資源評価へ反映 させるには、他の2国の理解を求めるとともに、調査を継続しデータを蓄積する必要があ る。本調査の結果を受けて、現在、CCSBTの共同調査として1999年調査を実施するため に、解析結果の検討・調査計画の再調整等の作業が進められている。
[その他]
研究課題名:魚群分布と漁獲努力量分布との関係の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成10年度(平成10~13年度)
研究担当者:辻祥子、平松一彦、西田勤、伊藤智幸、竹内幸夫、庄野宏、高橋紀夫
発表論文等: Pilot plan for Experimental Fishing Programme for southern bluefin tuna.,  CCSBT-SC/9807/30, 26pp, 1998. Evaluation of CPUE interpretations through the analysis of results from the 1998  Experimental Fishing Program (EFP)., CCSBT-EFP/99/7, 42pp, 1999.

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