研究成果情報(遠洋漁業関係)

大西洋メバチの資源量指数の推定

[要約]
 
アーカイバルタグを装着したクロマグロが、米国サンディエゴ沖で再捕された。装着され た標識に記録されたデータから放流後、約1年間日本南岸を徐々に北上、東進した後、約2 ヶ月で太平洋を横断し、米国西岸沖に到達したことが明らかとなった。
遠洋水産研究所・浮魚資源部・熱帯性まぐろ研究室
[連絡先] 0543-36-6044
[部会名] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専 門] 資源評価
[対 象] まぐろ
[分 類] 行政
[背景・ねらい]
大西洋におけるメバチの漁獲量は、はえ縄による大型魚の漁獲増とまき網による小型魚の 漁獲増により近年非常に高くなった。特に、小型魚の漁獲が将来の大型魚の漁獲に与える 影響に加えて、その後加入も低下する加入乱獲の恐れも懸念されるところから、正確な資 源評価が望まれている。まぐろ類の資源評価においては資源量を直接推定することが困難 なため、資源量指数をもとにモデルをチューニングする必要がある。このため、中大型魚 の大部分を占める我が国はえ縄漁業の資料を詳細に解析し、統計モデルを用いて年齢別資 源量指数を推定する。

[成果の内容・特徴]
・漁獲尾数および体長測定尾数を海区別季節別に整理し、体長は緯度方向よりも経度方向で良く似た組成を示すことを確認した。
・体長測定データの補完手順を決定し、海区別季節別の漁獲物体長組成を作成した(図1)。これを成長式の各齢の体長範囲で切断し、釣獲率を乗じて年齢別釣獲率とした。
・この年齢別釣獲率について誤差項にポアソン分布を仮定した統計モデルを当てはめ、季節・海域・漁具・一鉢あたり鈎数(図2)などの変数について標準化を行った。これらの変数は何れも有意で、特に海域、一鉢あたり鈎数等をモデルに組み込む必要がある。
・年齢別資源量指数は、高齢である5~6歳魚は1980年代の初め頃から低下傾向を示し、3~4歳魚は1980年代の終わり頃から急激に減少している(図3)。
・この資源量指数を用いたコホート解析から、親魚量(3歳魚の半分と4歳魚以上)が1990年代前半までは緩やかに減少し、その後急速に低下したこと、および過去数年間に漁獲死亡率が急増したことが示された。

[成果の活用面・留意点]
結果は解析に用いられている自然死亡率にかなり依存するが、資源は近年急速に悪化しており早急な資源保存措置が必要という勧告案がICCATにおいて作成された。
同時に本種に対する研究を集中して行う必要性が指摘され、ICCATでは標識放流を中心とした総額220万米ドルに達する4年計画の研究計画プログラムが実施されることとなった。
この研究計画プログラムの結果もできるだけ取り込んで、結果をできるだけ改善していく必要がある。

[その他]
研究課題名:メバチの資源評価
予算区分 :経常
研究期間 :平成10年度(平成8~12年度)
研究担当者名:宮部尚純、岡本浩明、松本隆之
発表論文等: reation of bigeye tuna catch-at-size caught by the Japanese longline
fishery in the Atlantic, 大西洋まぐろ類保存委員会科学論文集,ICCAT, CVSP,
48(3):304-306. 19980. Age specific CPUE for Atlantic bigeye tuna standardized by Generalized Linear Model.
大西洋まぐろ類保存委員会科学論文集,ICCAT, CVSP. 48(3):307-310. 1998.

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