研究成果情報(遠洋漁業関係)

オットセイの胃中で消化されたいか類の同定とサイズの復元

[要約]
北太平洋で採集されたオットセイの胃内容物中のいか類を調べ,消化の進んだいか類に ついても種を同定するとともに外套長を復元した結果、西部北太平洋では小型のホタル イカが餌生物として重要な役割を果たしていることを明らかにした。
遠洋水産研究所・外洋資源部・外洋いか研究室
[連絡先] 0543-36-6057
[部会名] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専 門] 資源評価
[対 象] いか類
[分 類] 普及
[背景・ねらい]
いか類は北太平洋の生態系において大型捕食者の餌生物として重要な役割を果たして いると考えられる。しかし,体を硬組織で覆われていないいか類は短時間で消化されて しまうため、大型捕食者によって利用されているいか類の種組成や個体サイズについて の知見は少ない。そこで、いか類を多く捕食する海産哺乳類のひとつであるオットセイ を対象として、1981年から1994年まで北太平洋西部及び中部海域で採集された89頭の 胃内容物中のいか類を調べ、消化が進んでいたいか類については、顎板(図1)を用い て種の同定を行うとともに、その外套長を復元した。

[成果の内容・特徴]
・西部北太平洋からは8科15種のいか類が出現し、その出現頻度はホタルイカ (51.4%)、タコイカ(31.1%)、ユウレイイカ(12.2%)、スルメイカ(12.2%)、ツメイカ(10.8%)の順であった。個体数ではホタルイカが全体の94.6%に達し、6頭のオットセイの胃からは100個体以上(最大525個体)のホタルイカが出現した。
・流し網によってオットセイが採集された中部北太平洋からは3科4種のいか類が認 められたが、アカイカの平均外套長は294 mmと大きかったが、これは流し網にかか ったアカイカを捕食したためと考えられた。
・北太平洋で採集されたホタルイカの顎板を用いて、本種についてこれまで知見が なかった外套長の復元式を求めた(図2)。この式から導かれた胃内容物中のホタルイ カの平均外套長は1、2、4月の間、42~44mmとほぼ一定であった。
・西部北太平洋のキタオットセイが捕食しているいか類は、摂餌海域において集群 している外套長200mm以下のいか類(図3)で、その中でも特に小型のホタルイカが 重要であることが明らかになった。

[成果の活用面・留意点]
他の大型捕食者の胃内容物についても、同様の手法によって胃内容物中のいか類の種 の同定とサイズの復元が可能である。また、小型いか類がオットセイの餌として重要な役 割を果たしていることが明らかになったことは、複数種の一括管理モデル開発に向けて有 益な知見である。今後は質的な研究の蓄積に加え、量的な検討を加えることが必要である。

[その他]

研究課題名:大型捕食者の消化管におけるいか類の同定技術の確立
予算区分 :経常
研究期間 :平成8~12年度
研究担当者名:森 純太,谷津明彦,田中博之
発表論文等: Squids in the diet of northern fur seal, Callorhinus ursinus, caught in the western and central North Pacific Ocean. Mori, J., Kubodera, T., and Baba, N. Fisheries Research, in publ.

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