「ハチワレの測定・観察を行いました」(令和2年5月29日)

 
・まぐろ漁業資源グループでは、2020年春に実施した傭船調査で捕獲されたハチワレ2個体の測定・解剖を行いました※。画像の個体は、4月に捕獲されたオスで、体長(吻端から尾鰭前の欠刻は約170cmでした。尾鰭先端までの長さは約340cmで、全体の約半分が”しっぽ”ということになります。この個体は釣上げ時に暴れて大変だったそうです。
   
ハチワレの特徴は、おでこに当たる部分が盛り上がり、”八の字”状に割れ込むような溝があることです。和名のハチワレはこの特徴が由来となっています(諸説あり)。また、大きな目も本種の特徴であり、英名はその特徴を反映したBigeye thresherとなっています。衛生標識を用いた調査によれば、昼間は水深200-360m(稀に700m)帯を遊泳しており、光が届かない環境でもその目の構造を生かして摂餌をしていると考えられています。胃の中からは魚類やイカ類が多く見られ、深層性の魚類も報告されています。 ・解剖の前に、様々な部位を測定します。歪んでしまった鰭を伸ばしてから正確に測定します。
捕獲船上で解体されず、丸のまま水揚げされることは少ないので、できるだけ詳細な
情報を記録するために、体の傷や寄生虫の有無なども確認しています。
今回の調査で得られた詳細な計測結果は、船上で正確に種判別を行うための基礎情報として活用されます。
測定を終えた個体を解体していきます。近畿地方では、ハチワレの肉を干物にして食べる地域があり、「さめのたれ」として珍重されています。ヒレはフカヒレに加工されることもあります。新鮮な状態であれば臭いもほぼ無く、火を通しておいしく食べられそうでしたが、今回は炎天下に2日間ほど置いたため、やや分解が進んでいました。 オナガザメの仲間は、尾鰭で餌生物を攻撃し、弱った個体を捕食する習性があると考えられており、実際に野外でもそのような行動が観察されています。はえ縄調査のデータを調べてみると、尾びれに釣り針が刺さっている事例が、ほかのサメに比べて多いこともこの仮説を支持していると考えられます。この尾鰭で叩かれると大けがをするので、釣上げには十分な注意が必要です。