耳石(偏平石)の形態と各部の名称

各部の名称と数値的形質
耳石には偏平石(Sagitta)、礫石(Lapillus)、星形石(Asteriscus)の三種類が、左右それぞれ一組ずつ合計6個あるが、種類同定には最も大きい偏平石を用いる。ここでは、このマニュアルで使われる名称について解説する。名称および解説は大江(1985)を参考とした。実際の耳石には種類によってここに示されていない部位も、また存在しない部位もある。
- 嘴状突起(Rostrum):耳石の前方下部を形成する主要突起。種類により長短の特徴が現れる。鋭角の突起か、鈍角か、あるいは突起基部の太さも種判別の鍵となる。
- 上部嘴状突起(Antirostrum):耳石前方に水平方向に突出する突起で上部に位置するもの。種によって全くないか、発達が悪いことが多い。嘴状突起の形と合わせて観察することにより、種判別に役立つ。
- 前部開口切刻部(Excisura):嘴状突起と上部嘴状突起によって形成される切り込み。
- 後部開口切刻部(Excisura
minor):種類により耳石後部にも切り込みが入る場合もある。ハダカイワシ類では一般的にないか、あっても浅いものが多い。
- 裂溝(Sulucs):耳石中央の溝。この形状は種判定に特に有効とされるが、胃内容物では表面が消化されている場合が多く、浅い裂溝では特徴が失われていることも多い。
- 小歯状突起(Denticle):耳石周縁の歯状の突起。
- 鋸歯(Serration):耳石周辺の鋸歯状の突起列。
- 鈍鋸歯(Crenulate):耳石周辺の鋸歯状の突起列で先端が円形のもの。
- 耳石長(Otolith length,
OL):耳石の水平方向の前部尖端周縁と後部尖端周縁の最大長。体長または体重との比例関係により、耳石長から体長や体重を推定できる場合がある。
- 耳石高(Otolith height,
OH):耳石の上下方向の最大長。耳石長との比を観察することで、検索初期の鍵となる。
このマニュアルでは、基本的に右側耳石の内面を写真撮影してあるが、場合により左側の内面を撮影してあるものもある。また、写真中に示された耳石長の単位はmmである。