第16回談話会報告

演題:南氷洋ミンククジラ性成熟年齢の低下が意味するもの
             ―サブタイトル:15年間にわたるIWC国際論争とその帰着―

演者:外洋資源部 加藤秀弘

場所:遠洋水産研究所 大会議室

日時:平成11年10月27日 15:00~16:30

講演の概要:

今世紀初頭に始まった南氷洋捕鯨は、シロナガスクジラをはじめとして次々と大型鯨類の乱獲を繰り返し、1970年代の終わりに捕獲できる種類は小型のミンククジラのみとなった。新管理方式の導入をはじめとして、この鯨種については、資源調査も充実し、資源管理も格段に向上したものの、生態的特性については未知の分野が多かった。演者は、環境の変動に応じた同種の生態的応答を分析するため、通常用いられる直接的な方法だけでなく、耳垢栓成長相に形成される変異相を分析して、1970年代以降の情報しかなかった同種の生態的情報を一挙に1940年代まで遡ることに成功し、1950年代には14歳であった性成熟年齢が漁獲の始まる1970年代初頭には7歳にまで低下していることを明らかにした。

しかし、この結論は、ミンククジラの捕獲枠増加に結びつくことから、商業捕鯨停止以降もこの真否を巡り国際捕鯨委員会(IWC)では長期に及ぶ議論を繰り返してきた。この間、演者は分析に内在する数理的バイアスの評価と補正、この現象を生み出した生物学的メカニズムを明らかにし、最終的にこの現象が生態的競争種であるシロナガスクジラの減少によるものと推察し、15年間の議論に耐え1997年の特別会議のおいて分析が肯定された。この研究が一つの契機となり、IWCではシロナガスクジラの資源回復プロジェクトが開始されたが、一般的資源学の分野に置いても、生物資源の変動機構を明瞭に解明したものとして高い評価を得た。演者は、この研究により平成11年度科学技術庁長官賞(研究功績表彰)を授与された。

なお、この内容に関心のある方は、嶋津靖彦(1999):加藤さんの科学技術庁長官賞を祝して.遠洋水産研究所ニュース、第104号:28-29をご覧ください(ホームページ上でも公開中)。

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